調剤報酬は非課税なのに、なぜ薬局に消費税の負担が出るの?

調剤報酬は非課税なのに、なぜ薬局に消費税の負担が出るの?

「調剤報酬には消費税がかからない」と聞くと、薬局には消費税の負担がないように思えるかもしれません。でも実際には、医薬品の仕入れや家賃、調剤機器などの支払いで、薬局も消費税を払っています。この記事では、なぜ薬局に消費税の負担が出るのか、そしてその負担が国の制度でどう手当てされているのかを整理します。

調剤報酬は「非課税」、仕入れは「課税」

健康保険法などにもとづく医療は、消費税が非課税(そもそも消費税がかからない取引)です。保険調剤の報酬も、患者さんが窓口で払う一部負担金も、ここに含まれます。一方で、薬局が支払う側の多くには消費税がかかっています。

お金の出入り消費税
保険調剤の報酬(患者さんの一部負担金を含む)かからない(非課税)
市販薬(OTC医薬品)や日用品の販売かかる(課税)
長期収載品の選定療養の「特別の料金」かかる(課税)
医薬品の仕入れ、店舗の家賃、調剤機器・システムなどかかる(薬局が消費税を払う)
スタッフの給与かからない

出典:国税庁「No.6201 非課税となる取引」(令和8年4月1日現在法令等)、厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」

「控除対象外消費税」とは

ふつうの会社は、売上で預かった消費税から、仕入れで払った消費税を差し引いて(控除して)納めます。ところが保険調剤の売上には消費税がかからないので、仕入れで払った消費税を差し引く相手がありません。こうして薬局の負担として残る消費税を「控除対象外消費税」(差し引けずに残る消費税)と呼びます。

この負担は、国が診療報酬・調剤報酬の中で手当てする(補てんする)しくみになっています。手当ての方法は、支払いの種類によって分かれています。

薬局が払う消費税は、どう手当てされている?
薬局が払う消費税国による手当ての方法
医薬品の仕入れにかかる分薬価に消費税相当分を上乗せして設定
家賃・機器・システムなどにかかる分調剤基本料などの点数に上乗せ

出典:中央社会保険医療協議会 医療機関等における消費税負担に関する分科会「診療報酬による消費税補てん状況の把握について(案)」(令和7年10月8日)

調剤報酬での補てんのこれまで

消費税の導入(1989年)と、5%(1997年)、8%(2014年)、10%(2019年)への引上げのたびに、診療報酬・調剤報酬への上乗せで対応してきました。2019年10月には、調剤基本料1が41点から42点になるなど、調剤基本料や一包化加算などが引き上げられています。

補てんが足りているかは、中医協(診療報酬を話し合う国の会議)の分科会で定期的に確認されています。2025年11月に示された結果は次のとおりです。

区分2023年度2024年度
保険薬局107.5%103.7%
一般診療所96.8%93.5%
病院106.3%104.9%
全体(医科・歯科・調剤)103.1%100.3%

100%を超えていれば、平均すると払った消費税分が報酬で手当てされている、という意味です。ただしこれは1施設あたりの平均で、個々の薬局によってばらつきがあることも議論されています。2026年度の改定では、上乗せ点数の見直しは行わない方向で整理されました。

出典:中央社会保険医療協議会 総会(第631回)「診療報酬による消費税補てん状況の把握について」「令和8年度診療報酬改定における対応(案)」(令和7年11月28日)、中医協 総-2-2「消費税率10%への引上げに伴う対応」(平成31年2月6日)

保険外の売上には消費税がかかる

市販薬やサプリメント、衛生用品などの販売は課税の売上です。2026年6月からは、長期収載品の選定療養の「特別の料金」が、先発品と後発品の価格差の4分の1から2分の1になりました。この特別の料金も課税の対象です。

消費税を納める義務があるかどうかは、この課税の売上で判定します。原則として、基準期間(個人は2年前、1年決算の法人は2期前)の課税売上高が1,000万円以下なら免除されますが、インボイスの登録をしている場合は免除されません。ご自身の薬局がどう扱われるかは、税理士・税務署に確認してください。

出典:国税庁「No.6501 納税義務の免除」(令和8年4月1日現在法令等)、厚生労働省「後発医薬品のある先発医薬品(長期収載品)の選定療養について」

たとえるなら「標準用量」

添付文書の用量は、多くの患者さんを想定した「標準」です。実際には、年齢や腎機能に合わせて量を調整します。消費税の補てんも同じで、全国の平均的な薬局を想定して設計された「標準用量」です。在宅の設備が多い、改装したばかり、といった薬局では、平均とずれることもあります。自分の薬局に合っているかは、自分の数字で確かめるのが確実です。

自分の薬局で確かめたいこと

  1. 1年間に払った消費税の総額:帳簿や決算書で、仕入れや経費にかかった消費税を確認します
  2. 保険外の売上の割合:市販薬や選定療養の特別の料金などが、どのくらいあるかを見ます
  3. 大きな設備投資の予定:改装や機器の入れ替えの年は、払う消費税が一時的に増えます。お金の流れは薬局のキャッシュフローの記事も参考にしてください

税額の計算や申告のしかたは、個別の判断になります。詳しくは税理士・税務署へご相談ください。

まとめ

  • 保険調剤の報酬は消費税が非課税。でも仕入れや経費には消費税がかかる
  • 差し引けずに残る消費税を「控除対象外消費税」と呼び、薬価と調剤基本料などで手当てされている
  • 2024年度の保険薬局の補てん率は平均103.7%。ただし薬局ごとにばらつきがある
  • 市販薬や選定療養の特別の料金など、保険外の売上には消費税がかかる

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品をおすすめするものではありません。制度の内容は2026年10月時点のものです。

薬局経営とお金
この記事を書いた人
薬剤師FP 池ゆか

薬剤師/AFP/証券外務員一種。お金とカラダの相談室 代表。29歳のとき、母の闘病と父・祖母の介護が重なり、「体調」と「お金」は切り離せないと実感してFPの資格を取得。薬剤師の視点で、家計・保険・NISA・ライフプランのご相談を全国からオンラインで受けています。シティリビング、読売カルチャーセンターで講師を担当。医療法人・ドクターの方のご相談も。

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