医療費が高額になったとき、ひと月の自己負担に上限を設けてくれるのが高額療養費制度(1か月の医療費の自己負担が上限を超えたら、超えた分が戻ってくるしくみ)です。この制度は2026年8月の診療分から見直され、さらに2027年8月にも見直しが予定されています。患者さんに聞かれることも多い医療職の方に向けて、何が変わったのか、まだ決まっていないことは何かを整理します。
見直しまでの経緯
もともとは2025年8月から上限額を引き上げる案が示されていましたが、患者団体などの声を受けて、いったん見送られました。その後、国の専門委員会で議論が重ねられ、2026年8月からの見直しが決まりました。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2024年12月 | 2025年度予算案で、2025年8月からの段階的な引き上げ案が示される |
| 2025年3月7日 | 首相が、2025年8月の引き上げも含めて見送ると表明 |
| 2025年12月16日 | 「高額療養費制度の在り方に関する専門委員会」が見直しの基本的な考え方をまとめる |
| 2026年8月 | 第1段階:月の上限額の見直し、年間上限の新設 |
| 2027年8月 | 第2段階(予定):所得区分を細かく分ける |
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月31日更新)、厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」、ニッセイ基礎研究所の解説資料(2025年の見送りの経緯)
70歳未満の自己負担限度額(2026年8月〜)
会社員などで健康保険に入っている人は、標準報酬月額(毎月の給与をもとに決まる、保険料計算のための金額)で区分が決まります。

| 区分(標準報酬月額) | 2026年7月まで | 2026年8月から | 多数回該当 | 年間上限 |
|---|---|---|---|---|
| ア:83万円以上 | 252,600円+(医療費−842,000円)×1% | 270,300円+(医療費−901,000円)×1% | 140,100円 | 168万円 |
| イ:53万〜79万円 | 167,400円+(医療費−558,000円)×1% | 179,100円+(医療費−597,000円)×1% | 93,000円 | 111万円 |
| ウ:28万〜50万円 | 80,100円+(医療費−267,000円)×1% | 85,800円+(医療費−286,000円)×1% | 44,400円 | 53万円 |
| エ:26万円以下 | 57,600円 | 61,500円 | 44,400円 | 53万円(※) |
| オ:住民税非課税 | 35,400円 | 36,900円 | 24,600円 | 29万円 |
※標準報酬月額15万円以下と確認できた人は、年間上限41万円が適用され、2027年8月以降に払い戻しされます。国民健康保険の人は、所得をもとに同じ5つの区分に分かれます。
出典:全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額な医療費を支払ったとき」、厚生労働省「高額療養費制度に関する参考資料」
架空のモデルケースで計算すると
標準報酬月額36万円(区分ウ)の人が、ひと月の医療費100万円(窓口3割で30万円)の治療を受けた場合です。
| 2026年7月まで | 2026年8月から | |
|---|---|---|
| 自己負担の上限 | 87,430円 | 92,940円 |
| 払い戻される額 | 212,570円 | 207,060円 |
出典:協会けんぽ「高額な医療費を支払ったとき」の計算式をもとに試算(架空のモデルケース)
ひと月あたりの上限は5,510円上がりました。一方で、長く治療が続く人への配慮として、次の2つがあります。
多数回該当と、新しい年間上限
多数回該当(直近12か月で3回以上上限に達したら、4回目から上限がさらに下がるしくみ)の金額は据え置かれました。これに加えて、8月から翌年7月までの1年間の自己負担に「年間上限」が新設されました。年間上限を超えた分は、加入している保険から払い戻しを受けられます。協会けんぽでは、年間上限の申請は2027年8月から始まるとされています。
注意したいのは、多数回該当の回数は、同じ保険に入っている間だけ数えられることです。転職して保険が変わると、回数は引き継がれません。
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」、協会けんぽ「高額な医療費を支払ったとき」
窓口での支払いを上限までにするには
マイナ保険証を使うか、事前に「限度額適用認定証」を受け取って提示すれば、窓口での支払いが月の上限額までになります。認定証は、加入している健康保険組合、協会けんぽ、市区町村(国民健康保険)で手続きします。マイナ保険証なら、この手続きは不要です。
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
まだ決まっていないこと・これからのこと
- 2027年8月から、所得区分が細かく分かれる予定です。厚生労働省は、今の限度額から大きく増えないよう配慮するとしています
- 年収約200万円未満の課税世帯は、多数回該当の金額を25%引き下げる予定です
- 年間上限の申請書の様式など、具体的な手続きはこれから案内されます
- 健康保険組合や共済組合には、独自に上乗せの給付(付加給付)があるところもあります。内容は加入先によって違います
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」、協会けんぽ「高額な医療費を支払ったとき」(2026年10月確認)
たとえるなら「お薬手帳」
お薬手帳は、これまでの薬の記録を残しておくことで、次の処方を安全にするためのものです。手帳を新しくして前の記録が見えなくなると、重複や飲み合わせに気づきにくくなります。高額療養費の多数回該当も、同じ保険の中での「記録」で数えられます。治療が続いているときに転職や保険の切り替えが重なる場合は、回数がリセットされることも含めて、事前に加入先に確認しておくと安心です。
まとめ
- 高額療養費は、2025年の見送りを経て、2026年8月診療分から見直された
- 70歳未満の月の上限は、ア〜エの区分で約7%上がった。区分ウは「85,800円+1%」
- 多数回該当は据え置き。8月〜翌7月の年間上限が新設され、申請は2027年8月から
- 2027年8月には所得区分の細分化が予定されている。窓口ではマイナ保険証か限度額適用認定証を
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品をおすすめするものではありません。制度の内容は2026年10月時点のものです。

