薬局を法人で経営していると、社長自身も役員報酬を受け取りながら厚生年金に加入していることが多いと思います。では、65歳を過ぎて老齢厚生年金を受け取れる年齢になったとき、役員報酬をもらい続けると年金はどうなるのでしょうか。この記事では、働きながら年金を受け取るときのしくみ「在職老齢年金」と、2026年4月からの見直しを整理します。
役員も厚生年金に入っている
法人の代表者や役員であっても、法人から仕事の対価として報酬を受け取っていれば、厚生年金(と健康保険)の被保険者になります。社長ひとりの法人でも、厚生年金の適用事業所です。
出典:厚生省保険局長通知「法人の代表者又は業務執行者の被保険者資格について」(昭和24年7月28日 保発第74号)、日本年金機構「事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき」
在職老齢年金とは
厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る場合、年金の月額と給与(役員報酬)の合計が一定の「基準額」を超えると、超えた分の半分が年金から差し止められるしくみです。
基本月額 + 総報酬月額相当額 が基準額を超えると、超えた分の2分の1が支給停止
- 基本月額:老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額。加給年金は除く
- 総報酬月額相当額:その月の標準報酬月額 + 直近1年間の標準賞与額の合計 ÷ 12
対象になるのは老齢厚生年金だけで、老齢基礎年金は減りません。また、70歳以上で厚生年金の被保険者でなくなった後も、厚生年金の適用事業所で働いていれば、このしくみの対象になります。
出典:日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」(2026年2月13日更新)、日本年金機構 年金Q&A(70歳以上の役員報酬に関するもの、2026年10月1日更新)
2026年4月から、基準額が51万円→65万円に
2025年の年金制度改正で、この基準額が引き上げられました。2026年3月までは月51万円でしたが、2026年4月からは月65万円です。報道などで「62万円」と書かれていることがありますが、これは法律が成立したときの賃金水準で表した額で、2026年度の実際の基準額は65万円です。基準額は、賃金の動きに合わせて毎年度見直されます。
出典:日本年金機構「在職老齢年金制度が改正されました」(2026年4月1日更新)、厚生労働省「在職老齢年金制度の見直しについて」(リーフレット2026年1月版)
モデルケースで見ると
老齢厚生年金(基本月額)が月12万円の薬局経営者が、役員報酬を受け取りながら働く場合を考えます(賞与なし、架空のモデルケースです)。

| 役員報酬(総報酬月額相当額) | 合計 | 2026年3月まで(基準51万円) | 2026年4月から(基準65万円) |
|---|---|---|---|
| 月40万円 | 52万円 | 月0.5万円停止 → 11.5万円 | 全額 12万円 |
| 月50万円 | 62万円 | 月5.5万円停止 → 6.5万円 | 全額 12万円 |
| 月60万円 | 72万円 | 月10.5万円停止 → 1.5万円 | 月3.5万円停止 → 8.5万円 |
同じ報酬でも、基準額が上がったことで、年金が減らない、または減る額が小さくなるケースが増えています。
役員報酬を決めるときに考えたいこと
- 年金をいつから受け取るか:老齢厚生年金は、受け取りを遅らせる(繰下げ)と増える一方、在職老齢年金で止まる分は増えない点に注意が必要です
- 報酬と年金の合計で考える:手取りは、報酬にかかる税金・社会保険料と、年金の両方を合わせて見る必要があります
- 会社に残すお金とのバランス:報酬を下げれば会社にお金は残りますが、個人の手取りや将来の年金額にも影響します
役員報酬の決め方全体については薬局経営者の役員報酬、決める前に整理したい3つのこともあわせて読んでみてください。具体的な金額の判断は、年金事務所や税理士・社会保険労務士に確認しながら進めると安心です。
たとえるなら「飲み合わせ」
薬は、単独では問題がなくても、組み合わせ方で効き方が変わることがあります。役員報酬と年金の関係も同じで、それぞれの金額だけでなく「組み合わせたときにどうなるか」を見ることが大切です。
まとめ
- 役員も、報酬を受け取っていれば厚生年金の被保険者
- 年金(基本月額)と報酬の合計が基準額を超えると、超えた分の半分の老齢厚生年金が止まる
- 基準額は2026年4月から月65万円(3月までは51万円)
- 老齢基礎年金は対象外。70歳以上でも対象になる
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品をおすすめするものではありません。制度の内容は2026年10月時点のものです。

