「貯金いくらある?」とは、なかなか聞けないものです。でも、結婚を考える相手とお金の話をしないまま進むと、あとで「思っていたのと違う」が起きやすくなります。この記事では、結婚前に話しておきたいお金の5項目と、角が立たない切り出し方の型を紹介します。
お金の不安は「自分だけ」ではない
国の出生動向基本調査で、いずれ結婚するつもりの独身者(18〜34歳)に「結婚の障害」になりそうなことをたずねると、最も多かったのは結婚資金でした。住居や仕事の問題よりも、はるかに多くの人が挙げています。
| 結婚の障害(複数回答) | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| 結婚資金(挙式や新生活の準備のための費用) | 47.5% | 43.0% |
| 結婚生活のための住居 | 22.6% | 20.9% |
| 職業や仕事上の問題 | 15.4% | 19.0% |
つまり、お金の不安はほぼ2人に1人が抱えているもの。お金の話を切り出すことは失礼ではなく、むしろ相手を安心させる行為だと考えてみてください。
出典:国立社会保障・人口問題研究所「第16回出生動向基本調査」(2021年調査)報告書 図表1-3-1
話さないままだと起きること
裁判所の司法統計で離婚調停の申立ての動機を見ると、妻からの申立てでは「生活費を渡さない」が「性格が合わない」に次ぐ2位でした。夫からの申立てでも「浪費する」が4位に入っています。お金のすれ違いは、男女どちらにも起きています。
| 申立人 | 順位 | 申立ての動機 | 割合 |
|---|---|---|---|
| 妻 | 1位 | 性格が合わない | 37.1% |
| 妻 | 2位 | 生活費を渡さない | 28.8% |
| 夫 | 4位 | 浪費する | 11.6% |
お金の問題は、結婚してから表面化しやすいテーマのひとつです。だからこそ、結婚前の「話せる関係」づくりが役に立ちます。
出典:最高裁判所「令和7年 司法統計年報(家事編)」第19表 婚姻関係事件数(申立ての動機別申立人別)。割合は弁護士ドットコムによる集計(2026年5月掲載。動機は複数回答、「その他」「不詳」を除く)
結婚前に話しておきたい、お金の5項目
| 項目 | 話すポイント | 切り出しのひと言(例) |
|---|---|---|
| 貯蓄の有無 | 金額ではなく「貯める習慣があるか」 | 「毎月ちょっとずつ貯めてるんだけど、貯金ってするタイプ?」 |
| 借入(奨学金・ローン) | 残高と返済の見通し。珍しいことではない | 「実は奨学金があと何年か残ってて。ローンとかってある?」 |
| 保険 | 入っているか、誰のためか、いくら払っているか | 「この前、保険を見直してみたんだけど、何か入ってる?」 |
| 親への援助・介護 | 今決めなくていい。「決める時期」だけ合意する | 「うちの親は今こんな感じ。そっちのご両親は元気?」 |
| 仕事とお金の価値観 | 働き方の希望、お金より優先したいこと | 「子どもができても働き続けたいんだけど、どう思う?」 |
一度に全部を話す必要はありません。まずはこの5つを「知っておく」ことが第一歩です。
切り出し方の型:「自分から→聞く→評価しない」

1. 自分から先に出す
「私は毎月少しずつ貯めてるんだ」「実は奨学金がまだ残ってて」。先に自分のことを話すと、相手も話しやすくなります。
2. 相手には「有無」で聞く
「貯金ってしてるタイプ?」「奨学金とかローンってある?」のように、金額ではなくYes/Noで答えられる聞き方にすると、相手の負担が小さくなります。
3. 評価しない。最初の一言は「教えてくれてありがとう」
どんな答えでも、最初の一言は感謝にしましょう。アドバイスや意見は後日でかまいません。ここで否定的な反応をすると、次から話してもらえなくなります。
たとえるなら、初めての薬局で見せる「お薬手帳」
初めての病院や薬局でお薬手帳を見せると、医師や薬剤師は今飲んでいる薬を確かめてから、重なりや飲み合わせに気をつけて薬を選べます。見せないままだと、同じ成分の薬が重なってしまうこともあります。
お金の話も同じです。先に「今の自分」を見せ合っておくと、結婚後の家計を安心して組み立てられます。完璧な記録でなくて大丈夫。お薬手帳を見せるくらいの気軽さで始めてみてください。
奨学金は「返済計画つき」で伝える
日本学生支援機構の調査では、大学(昼間部)で奨学金を受けている学生は51.1%(令和6年度)。約2人に1人です。借入があること自体より、「いつまでに、月いくらで返す予定か」が伝わるかどうかで、相手の受け止め方は大きく変わります。伝えるのは、次の3つで十分です。
- 残っている金額(だいたいで大丈夫)
- 毎月の返済額
- 返し終わる予定の時期
また、日本学生支援機構の奨学金には、収入が減るなどして返還が難しくなったときに、月々の返還額を3分の2〜4分の1に減らせる「減額返還制度」(通算15年まで)や、返還を待ってもらえる「返還期限猶予」があります。こうした仕組みがあることも一緒に伝えると、相手の不安は小さくなります。
出典:日本学生支援機構「令和6年度 学生生活調査結果」(2026年3月)、同「月々の返還額を少なくする(減額返還制度)」
いつ話す?おすすめは「同棲や将来の話が出たとき」
子どものいる25〜49歳の共働き夫婦3,335人を対象にした民間調査では、結婚前や結婚当初にお金のことを話し合った夫婦は60.0%。残りの40.0%は「あまり話し合わず、なんとなく決まった」(30.9%)か「全く話し合わなかった」(9.1%)でした。毎月の貯蓄にも差が出ています。
| 話し合った夫婦 | 話し合いが不十分な夫婦 | |
|---|---|---|
| 毎月の貯蓄(平均) | 79,722円 | 51,355円 |
| 貯蓄できていない割合 | 2.3% | 16.4% |
話し合ったから貯まった、とまでは言い切れませんが、お金のことを話せるふたりのほうが、家計の仕組みを作りやすいと考えられます。同棲や将来の話が出たタイミングで、まず自分のことから少しずつ話してみるのがおすすめです。
出典:株式会社スマートバンク「共働き夫婦の『お金のホンネ』調査」(2026年7月調査、8月公表)。「話し合いが不十分」は「あまり話し合わずなんとなく決まった」「全く話し合わなかった」の合計
1回で終わらせない。話し合いを続ける3つのコツ
書いて「見える化」する
頭の中だけで話すと、話が平行線になりがちです。結婚・引っ越し・出産など、これから10年の予定を表に書き出すと、ふたりで同じものを見ながら話せます。書き方は10年ライフプランを5行で書く方法で紹介しています。
「今は決めないこと」を決める
親の介護や住む場所など、すぐに答えが出ないこともあります。その場合は「来年の帰省のあとに、もう一度話そう」のように、次に話す時期だけ決めておけば十分です。
話す時間と場所を選ぶ
疲れている夜や、大きな買い物をした直後は、気持ちがぶつかりやすいタイミングです。休日の昼間など、ふたりとも余裕のある時間を選ぶと、落ち着いて話せます。
まとめ
- 結婚の障害でいちばん多いのは結婚資金。お金の不安を話題にするのは自然なこと
- 話しておきたいのは貯蓄・借入・保険・親のこと・価値観の5項目
- 切り出し方は「自分から→有無で聞く→評価しない」
- 奨学金は「残高・月額・終わる時期」の3点セットで伝える
- 1回で決めきらず、書いて見える化しながら話し続ける
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品をおすすめするものではありません。制度・統計の内容は2026年10月時点のものです。
