奨学金の返還と、勤務先の「代理返還」制度 医療職が知っておきたい税金と社会保険料

奨学金の返還と、勤務先の「代理返還」制度 医療職が知っておきたい税金と社会保険料

6年制の薬学部や、看護・医療系の学校を卒業して、奨学金を返しながら働いている医療職は少なくないと思います。最近は、勤務先が奨学金の返還を肩代わりしてくれる「代理返還」という制度を設ける病院や薬局も出てきました。この記事では、日本学生支援機構(JASSO)の奨学金を念頭に、代理返還のしくみと、受ける側の税金・社会保険料の扱い、返還が苦しいときに使える制度を整理します。

代理返還とは

代理返還(企業等の奨学金返還支援制度)は、勤務先が、従業員の奨学金の返還残額の一部または全額を、JASSOへ直接送金するしくみです。2021年4月から始まりました。第一種(無利子)・第二種(有利子)の奨学金が対象です。

項目内容(2026年10月確認)
利用している企業等の数4,852社(2026年3月末時点)
JASSOの検索ページに載っている企業等2,365社(2026年9月30日更新)
検索の条件都道府県、業種(「医療、福祉」もある)、企業名

検索ページに載っているのは、掲載に同意した企業等だけです。気になる勤務先が載っていなくても、制度がないとは限りません。

出典:日本学生支援機構「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」制度サイト・制度検索ページ、日本学生支援機構 プレスリリース(2020年12月22日)

受ける側の税金と社会保険料

同じ「奨学金の支援」でも、勤務先がJASSOに直接送金するのか、給与に手当として上乗せするのかで、扱いが変わります。

奨学金の支援、受け取り方で扱いが変わる
支援の形所得税社会保険料
勤務先がJASSOへ直接送金(代理返還)非課税となりうる(役員など一定の場合は課税)報酬に含まれない
給与に「奨学金手当」として上乗せ給与として課税報酬に含まれる
給与規程で、給与の代わりに直接送金給与として扱われうる報酬に含まれる

直接送金なら、奨学金の返済に使われることがはっきりしているため、学資金(学ぶための費用として給付されるお金)として非課税とされうる、という考え方です。手当として受け取ると、所得税も社会保険料もかかるので、同じ支援額でも手取りが変わります。勤務先にとっても、代理返還の額は給与として損金(経費)にでき、賃上げ促進税制の対象になりうるとされています。具体的な扱いは、勤務先や税務署・税理士に確認してください。

出典:国税庁 質疑応答事例「奨学金の返済に充てるための給付は『学資に充てるため給付される金品』に該当するか」、日本年金機構「標準報酬月額の定時決定及び随時改定の事務取扱いに関する事例集」(報酬・賞与の範囲 問2)、日本学生支援機構「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」

病院・薬局で確認したいこと

就職や転職の際、求人票に「奨学金返還支援あり」と書かれていたら、次の点を確かめておくと安心です。

  1. 代理返還か、手当か:上の表のとおり、手取りに差が出ます
  2. 支援の上限と期間:月いくらまで、何年まで、総額の上限はあるか
  3. 勤続の条件と、退職したときの扱い:途中で辞めたら支援が止まるだけか、ほかの取り決めがあるか
  4. どの奨学金が対象か:JASSOの代理返還と、病院などが独自に貸す修学資金(一定期間働くと返還が免除されるもの)は別のしくみです。条件は契約ごとに違うので、書面で確認します

転職のときに確認したいお金のことは、転職前のお金のチェックリストの記事でもまとめています。

出典:日本学生支援機構「企業等の奨学金返還支援(代理返還)制度」制度サイト・制度検索ページ(支援の内容は企業等ごとに異なります)

返還が苦しいときの制度

出産や病気、収入の減少などで返還が難しくなったときは、延滞する前に、JASSOの制度を使うことができます。

制度内容主な目安
減額返還毎月の返還額を2分の1・3分の1・4分の1・3分の2に減らし、その分返還期間を延ばす給与所得者は年収400万円以下(扶養する子が2人なら500万円以下、3人以上なら600万円以下)。1回12か月、通算15年まで
返還期限猶予(一般猶予)一定期間、返還を待ってもらう経済的な理由の場合、給与所得者は年収300万円以下。1年ごとに願い出て、通算10年まで(傷病や産休・育休などは年数の制限なし)

どちらも、返す総額が減るわけではありません。減額返還では返還期間が延び、猶予では返還の終わりが先送りされます。また、延滞していると申請できない場合があるので、早めに相談するのが大切です。

出典:日本学生支援機構「減額返還制度の概要」(2026年6月更新)、「令和6年4月より減額返還がさらに利用しやすくなりました」(2024年4月4日)、「返還を待ってもらう(返還期限猶予)」(2026年4月更新)、「経済困難(一般猶予の申請事由)」

たとえるなら「服薬スケジュールの調整」

薬の飲み忘れが続くとき、薬局では、服用の回数や時間を生活に合わせて調整できないかを一緒に考えます。大切なのは、自己判断でやめてしまわずに相談することです。奨学金の返還も同じで、苦しいときは延滞する前に、減額や猶予で「続けられる形」に調整できます。勤務先の代理返還も、返還を続けやすくする選択肢のひとつです。

まとめ

  • 代理返還は、勤務先が奨学金をJASSOへ直接返すしくみ。利用は4,852社(2026年3月末)
  • 直接送金なら、所得税は非課税となりえ、社会保険料の対象にもならない。手当として受け取ると課税される
  • 求人の「返還支援あり」は、形・上限・期間・退職時の扱いを確認
  • 返還が苦しいときは、延滞する前に減額返還や返還期限猶予を

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品をおすすめするものではありません。制度の内容は2026年10月時点のものです。

薬剤師・医療従事者のお金
この記事を書いた人
薬剤師FP 池ゆか

薬剤師/AFP/証券外務員一種。お金とカラダの相談室 代表。29歳のとき、母の闘病と父・祖母の介護が重なり、「体調」と「お金」は切り離せないと実感してFPの資格を取得。薬剤師の視点で、家計・保険・NISA・ライフプランのご相談を全国からオンラインで受けています。シティリビング、読売カルチャーセンターで講師を担当。医療法人・ドクターの方のご相談も。

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