「子どもを授かりたい」と考えたとき、体のことと同じくらい気になるのが、お金のことかもしれません。妊活や不妊治療は、ふたりの気持ちや体調がいちばん大切です。それでも、使える制度を先に知っておくと、「費用が心配で踏み出せない」という迷いを少し軽くできます。
この記事では、2026年10月時点の制度を順番に整理します。治療を受けるかどうか、いつ始めるかは、ふたりと医師とで決めることです。ここでは判断の材料だけをお伝えします。
2022年4月から、不妊治療に保険が使えるように
2022年4月から、人工授精などの「一般不妊治療」と、体外受精・顕微授精などの「生殖補助医療」(体の外で受精させる治療)が保険適用になりました。窓口での支払いは原則3割で、事実婚のカップルも対象です(受診時に関係の確認を求められることがあります)。
ただし、体外受精・顕微授精には年齢と回数の条件があります。
| 治療の種類 | 年齢の条件 | 回数の条件 |
|---|---|---|
| 一般不妊治療(タイミング法・人工授精など) | なし | なし |
| 生殖補助医療(体外受精・顕微授精) 初めての治療開始時に女性が40歳未満 | 治療開始時に女性が43歳未満 | 胚移植(受精卵を子宮に戻すこと)は子ども1人につき通算6回まで |
| 同上 初めての治療開始時に女性が40歳以上43歳未満 | 同上 | 子ども1人につき通算3回まで |
回数は保険診療で行った胚移植だけを数えます。
出典:こども家庭庁「不妊治療に関する取組」、こども家庭庁「不妊治療の保険適用」リーフレット(令和5年4月1日版)、こども家庭庁「不妊のこと DICTIONARY 保険適用について」
先進医療は自費。ただし保険診療と組み合わせられる
保険の対象外の治療でも、国が「先進医療」(効果や安全性を確かめている途中の医療)と認めたものは、保険診療と一緒に受けられます。先進医療の部分は全額自己負担で、それ以外は保険の3割負担のままです。
2026年4月1日時点で、着床前胚異数性検査(PGT-A)など10の技術があり、費用は医療機関ごとに違います。
出典:こども家庭庁「不妊のこと DICTIONARY 保険適用について」(先進医療は令和8年4月1日時点)
支払いが大きくなった月は「高額療養費」
保険診療の自己負担が、ひと月の上限額を超えたときは、超えた分が戻る「高額療養費制度」が使えます。2026年8月診療分から上限額が見直され、厚生労働省の例では、年収約370万〜約510万円の人が1か月に100万円の医療費がかかった場合、自己負担は約9.3万円です。1年間(8月〜翌年7月)の上限も新しく設けられました。
注意したいのは、先進医療の費用は高額療養費の計算に入らないことです。
出典:厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(2026年7月31日更新)
自治体の助成(例:東京都)
自治体が独自に助成をしている場合もあります。たとえば東京都は、2026年4月1日以降に始めた治療から対象を広げました。

| 治療を始めた日 | 助成の対象 | 助成額 |
|---|---|---|
| 2026年3月31日まで | 保険診療と一緒に受けた先進医療の費用 | 費用の10分の7(1回の治療につき上限15万円) |
| 2026年4月1日以降 | 保険診療の体外受精・顕微授精と、一緒に受けた先進医療の費用 | 1回の治療につき上限15万円(高額療養費などで戻る額は差し引き) |
東京都は、治療開始日に妻が43歳未満、都内に住民登録していることなどが条件で、事実婚も対象です。お住まいの自治体にも独自の助成があるか、一度調べてみてください。
出典:東京都福祉局「東京都不妊治療費助成事業の概要」(2026年9月9日更新)、東京都「不妊治療費の助成拡大について」(2026年3月27日)、同「不妊治療費助成事業 申請受付開始について」(2026年10月1日)
医療費控除も忘れずに
不妊症の治療費や人工授精の費用は、医療費控除(1年間の医療費が多いときに、所得から差し引ける制度)の対象です。夫婦の分を合算でき、支払った医療費から保険などで補てんされた額を引き、さらに10万円(総所得金額等が200万円未満の人はその5%)を引いた額が控除額です(上限200万円)。
自治体の助成金を受け取った場合は、その額を医療費から差し引いて計算します。ご自身の場合にどうなるかは、税理士や税務署に確認してください。
出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」(令和8年4月1日現在法令等)、国税庁 質疑応答事例「不妊症の治療費・人工授精の費用」「地方公共団体が支給する少子化対策のための助成金等の所得税法上の取扱い」
たとえるなら「飲み合わせ」の確認
薬局では、新しい薬が出たときに、今飲んでいる薬との「飲み合わせ」を確認します。一緒に飲んでいい薬もあれば、どちらかを選ぶ薬もあるからです。
不妊治療のお金も、保険診療、先進医療、高額療養費、助成、医療費控除と、いくつもの制度を組み合わせて使います。「先進医療は保険と併用できるけれど高額療養費には入らない」「助成金を受けたら医療費控除では差し引く」のように、組み合わせのルールがあります。確かめておくと、思わぬ負担に慌てずにすみます。
仕事との両立を支えるしくみ
厚生労働省の調査(令和5年度)では、不妊治療を経験した人の26.1%が、仕事と両立できずに、退職、雇用形態の変更、治療をやめることのいずれかを経験しています。
- 不妊治療連絡カード:主治医に記入してもらい、職場に配慮をお願いするときに使えるカード
- 勤務先の制度:不妊治療のための休暇や、時間単位の休み、テレワークなどがあるか、就業規則で確認
- くるみんプラス:不妊治療と仕事の両立に取り組む企業を国が認定するしくみ
気持ちの面での相談は、都道府県などにある「性と健康の相談センター」でも受け付けています。
出典:厚生労働省「不妊治療と仕事との両立のために」(調査は「不妊治療と仕事の両立に係る諸問題についての総合的調査」令和5年度)、こども家庭庁「不妊治療に関する取組」
出産のときにもらえるお金については、出産でもらえるお金の基本にまとめています。
まとめ
- 体外受精・顕微授精の保険適用は、治療開始時に女性が43歳未満などの条件がある
- 先進医療は全額自己負担。保険と併用できるが、高額療養費には入らない
- 自治体の助成は地域で違う。東京都は2026年4月以降の治療から保険診療分も対象に
- 医療費控除は夫婦で合算でき、助成金は差し引いて計算する
- 職場の制度や「不妊治療連絡カード」も、ふたりで確認しておく
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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品をおすすめするものではありません。制度の内容は2026年10月時点のものです。

