小さな薬局の「会社のお金」と「個人のお金」を分ける。役員貸付金と金融機関の見方

小さな薬局の「会社のお金」と「個人のお金」を分ける。役員貸付金と金融機関の見方

小さな薬局を法人で経営していると、「会社の口座から少し立て替えておこう」「足りない分は自分の貯金から入れておこう」ということが起こりがちです。どれもよくあることですが、積み重なると決算書に「役員貸付金」「役員借入金」という形で残り、金融機関から見た会社の印象にも関わってきます。この記事では、それぞれの意味と、なぜ分けておくとよいのか、口座やカードの分け方を整理します。

役員貸付金・役員借入金とは

役員貸付金役員借入金
お金の流れ会社 → 社長(役員)社長(役員)→ 会社
決算書での位置会社の資産(貸したお金)会社の負債(借りたお金)
よくあるきっかけ会社のお金を個人の支払いに使った、使いみちがはっきりしない出金がある会社の資金が足りず、社長個人のお金で穴埋めした

どちらも、会社と社長個人の間でお金が行き来した結果として生まれます。言葉は似ていますが、金融機関からの見え方は少し違います。

出典:中小企業庁「事例でみる経営者保証の解除~課題解決のポイントとその効果」(2022年9月20日)

なぜ金融機関の評価に関わるのか

金融機関が中小企業にお金を貸すとき、社長個人が連帯保証人になる「経営者保証」を求めることがあります。この経営者保証をなくす目安として、「経営者保証に関するガイドライン」は次の3つを挙げています。

要件意味
法人と経営者の分離資産の持ち方やお金のやりとりが、会社と個人で区別されている
財務基盤の強化会社の資産や利益だけで借入金を返していける
経営の透明性決算書などを金融機関に適時、適切に開示している

ガイドラインのQ&Aでは、分離の例として「事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付は行わない」ことが挙げられています。日本政策金融公庫の「経営者保証免除特例制度」でも、確認の目安として「事業上の必要が認められない法人から経営者への貸付金等がないこと」が示されています。役員貸付金が大きいと、会社と個人のお金が混ざっているサインとして見られやすいということです。

出典:経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドライン」(2013年12月)・同Q&A(2022年6月30日一部改定)、日本政策金融公庫「経営者保証免除特例制度」

役員借入金はどう見られる?

社長が会社にお金を入れた役員借入金は、会社を支えた結果でもあります。ただ、いつ、どう返すのかがはっきりしないままだと、会社と個人の区別があいまいに見えることがあります。中小企業庁の事例集では、経営者からの借入金について完済の時期を確認したり、一部を資本に組み入れたりして、関係を整理した例が紹介されています。どの方法が合うかは会社ごとに違うので、顧問税理士と相談しながら決めることになります。

出典:中小企業庁「事例でみる経営者保証の解除~課題解決のポイントとその効果」(2022年9月20日)

口座とカードの分け方

会社と個人のお金の分け方
会社個人
銀行口座売上の入金、仕入れや経費の支払い専用役員報酬の受け取り、生活費
クレジットカード法人カード(事業の支払いだけ)個人カード(生活の支払いだけ)
お金の移し方役員報酬として決まった日に決まった額会社の口座から直接使わない
立て替えたとき精算のルールを決め、領収書と記録を残す—

ポイントは、会社から個人へお金が動く道を「役員報酬」などに絞ることです。役員報酬の決め方は薬局経営者の役員報酬についての記事もあわせて読んでみてください。

出典:経営者保証に関するガイドライン研究会「経営者保証に関するガイドラインQ&A」Q4-1(法人と経営者の資産・経理の分離の例。2022年6月30日一部改定)。表の分け方は、この考え方をもとにした一般的な例です

たとえるなら「似た薬は棚を分ける」

薬局では、名前や見た目が似ている薬を、あえて離れた棚に置くことがあります。近くにあると、どれだけ気をつけていても取り違えが起こりやすいからです。会社のお金と個人のお金も同じで、気をつけるより先に「置き場所」を分けてしまうほうが、混ざりにくくなります。

すでに役員貸付金・借入金がある場合

  1. 金額と経緯を確認する:決算書の勘定科目の内訳を見て、いつ、何のために生まれたのかを整理する
  2. 返済の予定を書面にする:中小企業庁の事例でも、借用書で返済の意思と計画を示した例がある
  3. 新しく増やさない:口座とカードを分け、これ以上混ざらないしくみをつくる

利息の付け方や精算の方法など、税金の扱いが関わる部分は、税理士・税務署にご確認ください。

まとめ

  • 役員貸付金は会社から社長へ、役員借入金は社長から会社へのお金
  • 経営者保証のガイドラインでは「法人と経営者の分離」が要件のひとつ
  • 日本政策金融公庫の経営者保証免除特例でも、事業上必要のない経営者への貸付金がないことが目安
  • 口座・カードを分け、会社から個人へのお金は役員報酬に絞る

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※本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品をおすすめするものではありません。制度の内容は2026年10月時点のものです。

薬局経営とお金
この記事を書いた人
薬剤師FP 池ゆか

薬剤師/AFP/証券外務員一種。お金とカラダの相談室 代表。29歳のとき、母の闘病と父・祖母の介護が重なり、「体調」と「お金」は切り離せないと実感してFPの資格を取得。薬剤師の視点で、家計・保険・NISA・ライフプランのご相談を全国からオンラインで受けています。シティリビング、読売カルチャーセンターで講師を担当。医療法人・ドクターの方のご相談も。

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